中期政策
1.「納得して、楽しく、働く」ことができる働きがいの高い職場を実現する
2022 年10 月に締結したイオングループ労働協約を基軸に、労連・HDsの協調的な労使関係を構築します。イオングループの持続的な成長のためには、単組の主体的な経営参画により、職場の問題を集約し改善提案を行い、労使協議会で改善策の実行と検証を繰り返すことが不可欠です。経営の施策を職場で実践し現実を創るのは私たちだという認識に立ち、「納得して、楽しく、働く」ことができる働きがいの高い職場を実現します。
また、国内最大規模の資源を最大限に活用できる内部環境の整備を実施するとともに、イオングループ労使や各社労使において、生産性を高めるための具体的な取り組みを実践できるよう、労使がともに先進的な取り組みをしている国や企業から学ぶ場を創出します。
流通・サービス産業では労働人口の減少に伴う人手不足が顕在化しています。単純定型業務のDX 化を通じて、省力化・省人化に取り組み、人によって産み出される価値ある仕事(創造性に富んだ仕事、コミュニケーション力を必要とする仕事等)に人時をシフトすることにより、働きがい・やりがいを高め、「イオンで働き続けたい」と感じることができる状態を目指します。そのために、一人ひとりの内発的動機が高まるための施策を労使で実施します。
- 協調的な労使関係を基軸に各社の労使協議において、職場の課題を解決する改善提案を行い、労使で実行、検証するサイクルを確立します。
- オペレーションの効率化とDX化をグループ共通施策として実施することで、グループ全体の生産性の向上を実現します。
- グループ労使が先進的な事例を国や企業から学ぶための場を創造します。
- 単組の現状分析を実施した上で、課題解決力の向上に向けた単組の学び支援のため、労連教育体系に基づく教育を実施し、単組の組織力を強化します。
- 多様性を尊重し、誰もがイオンで働き続け自己成長やキャリアを実現できるよう、労使で取り組みます。
- 各級労使にて職場の課題を解決する枠組みを構築し、安心・安全で良好な職場環境や人間関係を構築します。
- イオングループ各社において、定期的なフィードバックと公正な評価が適切に行われている状態を目指し、自身の成長や会社への貢献度を実感することで、帰属意識の醸成をはかります。
2.私たち一人ひとりの「学び」により、グループ・企業・個人の成長発展を実現する
イオン労連の組織現勢によると、組合員の女性比率は73.7%です。正社員の女性比率は37.6%、契約社員の女性比率は45.2%、短時間社員の女性比率は83.7%であり、短時間社員の女性は全組合員の65.5%を占めています。ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進する中でも、多くの組織において注力されているのは女性活躍推進の分野です。日本の女性活躍の現状は、世界標準以下という状況が続いており(2023年ジェンダーギャップ指数の総合順位は146か国中125位)特に指導的地位に就く女性の少なさが目立ちます。私たちは、女性リーダーを増やす取り組みの一つとして、短時間社員の組合活動への関与度を高めるとともに、組合役員に登用するための教育が必要です。また、イオン労連の中央役員の女性比率は25.3%にとどまっており、女性をトップリーダーに登用することが求められています。
さらに、組織の将来を担う次世代リーダーの育成は組織の持続的な発展には不可欠です。イオン労連の教育体系に基づき、地域・本部それぞれが育成の役割を担います。地域では人材の発掘、初級教育、本部では単組三役や労連中央執行委員を対象とした階層別教育を実施します。
- 単組活動の強化にむけて、階層別に本部と地域で教育を実施します。
- イオン労連の歴史や成り立ち、中央執行委員としての役割等、必要な知識を習得するための基幹教育を実施します。
- 男女共同参画アクションプランをイオン労連においても策定し、定性目標・定量目標を設定し、労連全体で女性リーダーの育成を推進します。
- 次世代のリーダー候補を対象にした研修・セミナー・交流の機会を創出します。
- 私たちを取り巻く環境・社会情勢の変化をとらえ、将来への展望を学ぶ機会を創造します。
3.組織拡大・組織強化活動を通じて、労連の総合力を発揮する
イオン労連は加盟単組数48単組、組合員数29万人の組織となり、グループの総従業員数では過半数を超える組織となりましたが、単組数はイオン㈱連結子会社175社の過半数に満たない状況です。グループ全ての従業員代表として、「未組織企業の組織化」と「加盟単組の組織率向上」を実現し、グループにおける集団的労使関係を強化します。
多様な組合員が集う連合体となったイオン労連は、加盟単組の様々な違いを認識し、それぞれの課題に沿ったきめ細かいフォローが必要です。新たに結成された単組や非専従役員で日常活動を推進している単組の組織基盤を整え組織力を強化するため、労連のサポート機能を強化します。
- 構成組織数において、「過半数(組織率50%以上)」を目指し、早期にグループ内未組織企業の組織化、ならびに労連加盟を進めます。
- 構成組合員数において、「安定的過半数(組織率75%以上)」を目指し、段階的に組織拡大を行います。また、単組の実態を鑑み、学生アルバイトや特定技能外国人も含めた多様化する雇用形態に対する取り組みを検討します。
- 友好労組との定期的かつ継続的な情報交換により、労連加盟に向けた働きかけを行います。
- すべての単組が課題解決サイクルを実現できる状態を目指します。
- 新結成単組や非専従役員で日常活動を推進している単組が自立的に活動できる状態を実現するため、単組に寄り添ったサポートを実施します。
- 単組組織全体の組織力向上のため、目標達成運動に基づき、単組ごとに短期・中長期の改善計画を策定します。定期的に進捗状況を確認し、単組の進捗に応じたサポートを実施します。
4.イオンらしい労働条件や働き方を確立する
過去20年の賃金推移を見ると、G7諸国(米・英・加・独・仏・伊・日)の中で、日本だけがほとんど賃金が上昇することなく長期停滞が続いています。これは、日本的雇用慣行により、雇用を守って賃金を抑制することが常態化し、結果として企業の事業構造転換を遅らせたことが一つの要因です。世界における競争力を確保し、経済の好循環をまわすためには、構造的な賃上げによる魅力ある賃金・労働条件を実現することが不可欠です。
私たちは、「守るべきは、個別の仕事や事業ではなく、人そのものである」という考え方に立ち、リスキリング等への積極的な教育投資による企業の枠組みを超えたイオングループ全体での人材活用を行うことで、持続的な労働条件の向上を実現します。
また、イオングループは40万人を超えるパートタイマーを雇用している企業集団であり、私たちが流通・サービス産業におけるパートタイマーの処遇改善を牽引していかなければなりません。特に、同一価値労働同一賃金と従業員区分の撤廃(ひとつの雇用区分)については、イオングループ労使で連携して早期に実現します。さらに、誰もが働きやすく、働き続けられる、魅力ある労働条件と労働環境の実現に労使で取り組みます。
- グループ労使・各社労使が一丸となって、賃金・労働諸条件を高め、魅力ある労働条件を実現します。
- 主要な労働条件におけるミニマム基準を設定し、誰もが安心していつまでも働き続けることのできるイオングループにします。
- 採用賃金の引上げを行い、各社労使における企業内最低賃金の協定化を進めます。
- 正社員・契約社員・パートタイマーという雇用区分の違いに関わらず、同一価値労働同一賃金を実現します。
- 各社の取り組みとして、短時間正社員制度(※①期間の定めのない労働契約を締結している②時間当たりの基本給与及び一時金・退職金等の算定方法等がフルタイム正社員と同等)の構築に向けて各社で検討を開始します。
- 育児や介護等のライフステージの変化に伴い、柔軟な働き方を希望する人もライフワークバランスを実現し、誰もが活躍できるイオングループにします。
- イオングループ労使・各社労使で、一人ひとりが自ら学べる教育制度を構築し、社会環境や働く環境の変化に対応したリスキリングができる環境を整備するとともに、企業の枠組みを超えた横断的な人材活用を行います。
- イオングッドライフクラブ、イオン健康保険組合の財政課題について、中期課題検討会を設置し、中長期的な方向性をイオングループ労使として提示します。
5.イオン労連は社会・地域の問題を解決する
現在の日本が抱える様々な社会課題は、少子高齢化や都市部への人口集中、労働人口の減少をはじめ、私たちの事業やくらしに大きな影響を与えるものとなっています。社会や地域の問題に対して、私たちは組合員の参画とステークホルダーへの働きかけを通じて持続可能な社会を目指します。
そのためには、私たちのありたい社会を実現するための力と政策が必要です。上部団体・組織内議員との連携や、組合員の参加関与を通じて個別政策を実現します。
地域においても、組合員の主体的参画による身近な課題解決を図るとともに持続可能な地域社会をつくるため、イオン生活圏構想をはじめとした労使の取り組みやパートナー議員・友好議員との連携を通じた取り組みを進めます。
- 政治活動と「社会の問題を解決する」ことを一体的な活動として推進し、政治活動の日常化を目指します。
- 組織内議員・準組織内議員・パートナー議員の必勝に向けて、労連の総力を結集して取り組みます。
- 上部団体と連携して実現を目指す政策について、組織内議員をはじめとしたステークホルダーと協働し、解決に向けた働きかけを進めます。
- 地域活動をより機動的に主体性を持った活動にするため、地域執行体制の構築に向け、イオン㈱の地域単位の組織体制や権限の範囲についてグループ労使で協議を開始します。
- 地域会議単位・県単位に加え、モール・SC等の核となる事業所やエリアを基点とした活動を推進します。
- イオングループ労使が窓口となり、地域行政とのかかわりや、生産者支援などを通じた産業振興に関わり、持続可能な地域づくりや地域の魅力を高めます。
- 労連活動との接点を増やすことで、組合活動を身近にします。
- 情報交換や単組を超えた活動の連携を図る中で、学びを促進します。
- 私たちとともに政策実現に取り組む議員のネットワークを構築します。
- UAゼンセンとも連携し、政策実現に向けたパートナー議員との政策懇話会を実施します。
- 心をつなぐプロジェクト、ハートフルボランティア等、これまでイオングループ労使で培ってきた地域に寄り添うボランティア活動に、より多くのイオンピープルが参画できるよう、しくみを構築します。
6.イオンの協調的労使関係を基軸に、各国の成長・発展に貢献する
イオンのグローバル枠組み協定に基づく労使の取り組みは、世界でも高い評価を受けています。海外におけるイオンの事業領域は今後もさらに拡大し続けます。私たちはイオンの海外展開の拡大に合わせ、各国のイオングループ企業で働くすべてのイオンピープルの労働条件・労働環境の向上に向けた取り組みを進めていきます。
また、サプライチェーン上における事件・事故の未然防止や各国の情勢に対する情報収集については、関係団体とも強力に連携をして取り組みます。さらに、イオンの協調的労使関係を各国のロールモデルとして民主的労働運動の浸透につなげられるよう組織内外に向けて積極的に情報を発信します。
カンボジアワーキングキャンプについては、社会貢献やボランティアという領域に留まらず、地域経済の活性化、新たな産業の創造、地域人材の育成等、地域の発展に向けた取り組みを推進します。
- イオン労使の取り組みについてUNIグローバルユニオン・UAゼンセンとともに効果検証を行います。
- イオン㈱・UNIグローバルユニオン・UAゼンセンとの関係性を強化し、職場やサプライチェーン上における問題発生時に迅速に対応できる体制を構築します。
- 従業員の主体的な経営参画を基盤に、健全な協調的労使関係を築ける労働組合設立をサポートします。
- 従業員の総意で結成される労働組合が、スマートパートナーシップに基づいた協調的労使関係が構築できるよう取り組みます。
- イオングループ企業で組織化された労働組合をグローバルネットワークユニオンと位置付け、組織強化や自立へ向けた活動をサポートします。
- 海外で結成された単組と国内の単組が互いに学び合う場を新たに創造します。
- カンボジアの成長・発展に伴う現地のニーズの変化を鑑み、カンボジアワーキングキャンプの活動内容をブラッシュアップします。また、新たに地域経済や産業の発展、現地人材の育成につながる取り組みを実施します。
- 社会貢献活動を通して「社会の発展とは何か」・「地域に貢献するとは何か」を体感し、参加者の人間的成長につなげます。
- 労連と加盟単組が連携し、出向者の労働・生活環境の改善に向けた取り組みを行います。
- どの国でも安心して働くことができるよう、海外出向者とのネットワークを通じて集約された、各国の労働条件や労働環境の課題改善に取り組みます。
7.活動を支える仕組みの構築
「ビジョン2035」実現のための財政の安定化・健全化に取り組み、単組の財政課題についても相互監査等を通じてお互いにサポートしながら、全体としてガバナンス強化を実現します。
また、ハラスメントは働く人が能力を十分に発揮することの妨げになるのはもちろんのこと、個人の尊厳や人格を不当に傷つける等、人権にかかわる許されない行為です。私たちが組合員をはじめとする
あらゆるステークホルダーから信頼され、良好な関係を築くためにも、ハラスメントを予防し迅速に解決するためのしくみを構築します。
単組の業務負担軽減につながる業務効率化のしくみや、利便性の高い情報システム等の共通プラットフォームを確立します。
- 監査機能(内部・外部・相互)を強化し、会計の透明性・健全性のある会計のしくみを構築します。
- 定期的なハラスメント研修・モニタリング調査等の施策を実施し、知識の習得と意識の醸成をはかります。
- 業務効率化のためのプラットフォームを構築し、より単組の活動に集中できる体制にします。
- 労連の活動を組合員や社会により効率的・効果的に発信するため、SNS等のデジタルツールを最大限活用します。また、対象者と発信内容を明確にして、次世代の広報活動にシフトします。